篝火プロジェクトCEO

上出 邦博

── 囲碁って、大人になってから始めるにはちょっとハードルが高い気もしますよね。

覚えることも多そうですし、何か強い“きっかけ”がないと始めにくいような。
「そうなんです、正直ずっと“自分には無理だろうな”と思ってました(笑)。囲碁って黒と白の石でしょ? もう見た目からして頭良さそうな人のゲームって感じで。将棋はできるんですよ。駒に書いてありますからね、『歩』『飛』って。でも囲碁は“石”しかないじゃないですか! あれ、わかるようになるんですか? って昔は思ってました(笑)」

── では、なぜ囲碁を始めようと?

「去年のことなんですけど、父が体調を崩したんです。
 父の趣味って、卓球とゴルフと囲碁、あとお酒(笑)。でも、病気の影響で運動がほとんどできなくなって。残ったのが“囲碁”だったんです。
 そのときふと、思い出したんですよ。小さい頃に父が何度も囲碁を教えてくれたのに、当時は全然興味が持てなくて。正直、ルールすら覚えられなかった。『この白と黒の石をどうすればいいの!?』って(笑)。」

── それが今になって、囲碁を。

「はい。読書用のコーヒーを企画し、販売していたときに山中さん三島さんから『一緒に囲碁の事業をやってみませんか?』って声をかけてもらったんです。『囲碁?』と思いました。不思議ですよね、何年も経って突然、囲碁が戻ってきた。
 これはもう、“囲碁からの呼び出し”だと思いました(笑)。やらなきゃって、運命だと。」

── 初めて父と向き合って囲碁を打ったときはどうでしたか?

「ボロ負けしました(笑)。初心者どころか未経験者ですよ。全然わかってなかったので、囲いも何もないまま石がどんどん取られていって。でも、面白かったんですよ。不思議と、悔しいっていうより“嬉しい”気持ちの方が大きくて。
 なにより、“父と対話してる”って感覚があったんです。言葉じゃなくて、石を通して。“昔と違う対話ができてる”って思いました」

── そうだったんですね……。今後も囲碁は続けていく予定ですか?

「もちろんです。今はルールも少しずつ分かってきて、前よりも“面白い”が増えてきました。囲碁って、盤の上だけじゃなくて、“人と人”がつながる不思議なゲームだと思うんです。
 これからも“未経験者目線”を大切にしながら、囲碁の魅力を商品やサービスを通じて届けていきたいです。“わからない”からこそ、伝えられることがあると思ってます。」

── きっと、誰かの“囲碁の第一歩”の背中を押す存在になりますね。

「父に勝つのが今の目標です(笑)。でもまあ……もう少し先になりそうです」

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負けても嬉しい初対局。囲碁がくれた、父との対話